積み木感覚で楽しむ



 今、額を大量に制作しています。
量が多くなればなるほど単純作業の連続です。額は通常4個の部材を
組み合わせる物ですから、例えば100枚の額を組上げるは400個
のパーツを制作する必要があります。これは最初に材に墨入れする段
階から刻み、面取り、角度切り、溝彫とそれぞれの工程を400回行
わなくてはなりません。
 一つの 工程が遅々として進まず、永遠に続くのかと思う事さえあり
ます。単純作業ですから体力的にも辛い部分が生じてきます。
 それを救ってくれるのが各工程で、そのつどパーツを写真のように
積み上げる工程なのです。これはまさしく積み木感覚で、幼きころの
記憶を蘇らせてくれ、どのように積み上げるかもセンスが問われるよ
うで、様々な形に積み上げては自己満足に浸ります。
 積み上げた連続パタンは面白いテクスチャーを生み出し、目を楽し
ませてくれたりもします。あまりにも美しく積み上がった時は、もち
ろんお茶にします。そして、しばし眺めております。
残念な事にゆっくりお茶をしている時間はそう長くありません。『早
く次の行程に掛からないと、間に合わないゾ』と促すもう一人のおせ
っかいな自分が居て、現実に引き戻らせるのです。
 渋々、積み上がったものを崩しつつ次の工程に移ります。そして、
新たな固まりが大きくなるにつれ、また楽しくなってきます。
 これの繰り返しで最終的に額に組み上がりますが、その時点で積み
木の楽しさは終了です。額になってしまえばどのように積もうが額は
額でしかありません。
 どのような制作においてもそのプロセスが様々な楽しみを与えてく
れるのですが、完成した時点でその物がフッとよそよそしく感じてし
まうのは私だけなのでしょうか不思議です。