道具考-2

 玄関前の氷割りのお役目もこの暖冬で2月に入ってからは一度もありませんでした。今までの疎遠になってしまったお詫びと、来シーズンの玄関前氷割りの活躍を願いつつ赤錆を奇麗に落とし金タワシとサンドペーパーで磨き上げました。昔の輝きを取り戻しピッケルも何やら若返ったように見えます。 今やオールメタルピッケルの時代、ウッドシャフトは博物館に納められつつありますが、その美しさはメタルピッケルより勝っていると思います。前回紹介したレールの断面形状と同じくこれ以上削ぎ落とす部分のない機能美には惚れぼれします。美しさだけでなく使い易さと信頼性を兼ね持つのは長年の経験から生まれたものだと思います。  スイスの鍛冶ローマン・ウイリッシュさん、あなたの手になるピッケルを縁あって私が所持しています。今から30数年前数々あるピッケルの中からあなたの作品を選択したのは、持ちやすさや重さもさることながらその形に惚れてしまいました。そのすきのない完璧さは見飽きる事がありません。そして、所持する事の大きな満足感をも与えて下さいました。 もうあの過酷な冬山には同行出来ませんが、このところ我が家の玄関前の氷割りに活躍してもらっています。その使い心地は、さすがにウイリッシュさんあなたのピッケルです、サクサク割取ってくれました。 実はウイリュシュさんにお詫びしなくてはなりません。ある事をきっかけにプッツリとやめてしまった山行、それ以来あなたのピッケルは物置の隅に追いやられてしまい、その存在さえ忘れていました。その結果、赤錆発生の悲惨な状態にさせてしまいました。申し訳ありません。 今日ここにお詫びと反省の気持ちを込めて磨き上げました。完全とは言えませんが昔の艶に戻せましたのでお許し下さい。大切にします。