道具考-1

 普段使用している道具の中からのお話。今回は金床。私が使っている金床は鉄道レールを切断したものです。これは20数年前に、親しくしていた鋸屋さんに頂いたもので、木工を生業にしようと決心した頃でしたので特別愛着があり現在に至るまで重宝しています。 このレールは小海線のものだそうで随分使い込まれており内側が車輪の圧力でダレが生じているのが写真でも確認できます。この上をSLが走ったかもしれません。厳冬期には圧雪に閉ざされ、真夏には膨張してイヌクギを緩めてしまったでしょう。また八ヶ岳特有の現象十何年に一度のヤスデの大発生、レールにはい上がったヤスデは車輪につぶされ、油分がスリップを起こさせ列車を立ち往生させる厄介者、その車輪空転現場にいたかもしれません。そして今短く切られハンマーで叩かれたり、接着の際の重しになったりしています。 その断面を改めて見つめ直すと、なんと美しい形なのだろうか。これ以上引く事も足す事も出来ない完成された形の持つ美しさ。それに使い続けられ、それに耐えた美しさ。工房の隅にころがしておくには忍びないとは思いますが、使ってこその道具、飾り物になってしまってはおしまい、まだまだ叩かれ重しになって頂きましょう。